【コラム】 枯渇するSAP技術者

全世界で高いシェア率を誇っているSAP製品は、日本国内でも2000社のユーザ企業を抱えています。今回のコラムは、独SAP社が発表したSAP Business Suite7のサポート期間延長について、そしてSAP技術者の不足についてです。

 

SAPは現地時間202024日に、SAP ERP ECC6.0をはじめとしたSAP Business Suite 7ソフトウェアのコアアプリケーションのメインストリームメンテナンスの終了時期を、当初発表していた2025年から、2027年末までに延長する方針を発表、さらにオプションの延長保守サービスを2030年末まで提供することも発表しています。併せて、SAP S/4HANAの保守サービスは2040年末までコミットするとのことです。

この発表を受けて、近年SAPユーザ企業をざわつかせていた「2025年問題」に、幾ばくかの猶予が与えられた形になりました。

また、これまでECC 6.0からS/4HANAに移行する手段は、S/4HANAの新規導入と、ECCのパラメータ設定やデータなどを引き継ぐリビルドの大きく二つでしたが、独SAP社が開発したツールを用いた移行方法(ユーザが移行する設定やデータ選択し移行することが可能で、SAP社がこのサービスを提供しているとのこと)が加わり、ユーザ企業にとっては、以前よりも移行の検討を進めやすくなったのかもしれません。

 

サポート期間の延長や、移行方法の選択肢が増えるなど、ユーザ企業にとって安心感を与えるニュースがある中で、現場のSAP技術者のリソース状況は全く改善していないと筆者は感じます。

筆者も業務上、SAP技術者を探すことがありますが、SAP技術者市場は大変カラカラな状態でして、どこの企業様も技術者を集めるのに苦慮している印象です。

このような、状況の背景には何があるのか、筆者が考える要因は3つあります。

一つ目は、リーマンショック後、法人によるIT投資が冷え込んだこと、またITサービスを提供するベンダーが教育に投資が出来なくなってしまったこと。

二つ目は、SAP市場が成熟した昨今では、顧客がエンジニア/コンサルタント個々人の経歴を問うようになり、チームとして仕事を請け、若手技術者を育成する環境が作りづらくなったのではないかということ。

最後に三つ目の要因として、IT業界の多重下請構造が考えられます。

ユーザ企業との商流が深いIT企業に所属するSAP技術者は、エンドユーザとの関わりが薄くなり、顧客業務プロセスを理解する機会を得ることが難しくなる傾向にあると考えます。

SAPコンサルタントは、SAPの各モジュールにおけるファンクションの知見はもちろん、ユーザの業務理解が必要になります。そのような知見を得るには、顧客との直接コミュニケーションが最高の教材ですが、そうした機会を得難いことが、人材の育成を阻む要因になっているのではないでしょうか。

 

上記の考察が正かどうかは断定できませんが、複数の要因が絡み合い、現在のSAP技術者不足の状況が引き起こされていると思います。

サポート期間の延長発表で少し時間的猶予が出来ましたが、今の「人」の状況を考えると、たった2年の延長とも思えます。今後、弊社のようなITベンダー各社は、SAPユーザ企業に現況をしっかりと伝えつつ、どういったサポートが出来るのか考え続ける使命があるのではないでしょうか。

 

さて、弊社におきましても、SAP関連の各種サービスを提供しております。SAP導入支援や運用保守サービス、SAP連携ソリューションなど、お客様のご状況に合った各種サービスがございます。

グローバルチームとの協業に強みを持っており、グローバルプロジェクトの遂行、外資系企業をはじめ、システム管理において英語が必要なお客様向けの運用サービスなど、グローバルカンパニーが求めるサービスラインアップと自負しております。

ご興味のある方は、以下ページをご覧ください。

ERPソリューション

https://www.tenon.co.jp/erp

お問い合わせ

https://www.tenon.co.jp/contact

 

ご相談・ご質問等、
お気軽にお問い合わせください。